ごあいさつ
日本障害者虐待防止学会 理事長
小山聡子
本学会は、障害者虐待の防止及び障害者の養護者に対する支援に関わる課題を研究・実践し、権利擁護の推進を図ることを目的に、2017年12月17日に設立されました。
私たちの社会は多様な存在を包含することで、むしろ強さを得ようとしてきたはずです。ところが、昨今の社会情勢においては、諸種の困難状況を個人責任に帰する傾向が強く見られ、そのような中では、障害のある人を差別視し、排除するような見解は、より起きやすくなっている面が否めません。もし虐待が起こった場合は、法を適用して一刻も早く被虐待者の安全を確保すべきことは当然です。それと同時に、そこにある構造的な課題に目を向け、虐待をしてしまった個人や集団への支援や教育を充実させ、人権という観点から社会全体の底上げを図って行かねばならないでしょう。
障害者に対する虐待のみならず、児童への虐待、高齢者への虐待、配偶者間の暴力など、どれもが一刻を争う深刻な事態と言えます。そしてこれらは、隣接する事案であるいじめや暴力一般、ハラスメント、さらには犯罪と密接にかかわりつつ、時と場合によって違った法律や制度で対応されてきました。その都度適用すべき法や制度を選択し適切に対応しなければならないのはもちろんのこと、対象が誰であれ虐待と言う行為は許されないと言う原則の下、これら法制度のあるべき形についても検討しなければならないでしょう。障害者への虐待を未然に防ぐ、起きてしまった虐待を拡大させない、そのことを目指す道は、おそらく「障害者虐待」の範疇を越えた広範な視点に基づいた努力につながることと思います。
これらを踏まえ、障害当事者やそのご家族、支援する施設・事業所の職員、関係機関や、さらには他学会の皆さまとも協働しながら研究と実践の両面から着実に活動を進めて参りたいと存じます。多くの方のご参加をお待ち申し上げております。